研究概要 |
1)-2.hCAP18/LL-37発現誘導による健常上皮細胞と扁平上皮癌細胞の抗菌作用増強効果の検討 hCAP18/LL-37の発現制御について,培養ヒト細胞において,活性型ビタミンD3処理によるhCAP18/LL-37mRNAの誘導を試み,健常上皮と癌細胞の反応性の差を検討した.その結果ヒト2倍体健常上皮細胞HaCaTでは,活性型ビタミンD3処理でhCAP18/LL-37mRNAが誘導されたが,ヒト培養口腔扁平上皮癌細胞株11種では,活性型ビタミンD3処理でhCAP18/LL-37mRNAが誘導されなかった.そこで,活性型ビタミンD3でhCAP18/LL-37mRNAが誘導されたHaCaT細胞を鋳型にして,口腔扁平上皮癌細胞SAS-H1に遺伝子導入を行い,G418の選択培地でhCAP18/LL-37高発現癌細胞安定株を得た.本細胞を用いてhCAP18/LL-37の産生分泌をウエスタンブロット法で確認したところ,細胞質画分で約14kDaのhCAP18蛋白質とプロセッシング後の5kDaペプチドが確認され,培養上清でも同様の5kDaペプチドであるLL-37が検出された.そこで,この培養上清を用いて,Streptococcus mutans BHTおよびStreptococcus mutans Ingbrittに対する抗菌効果を検討し,殺菌効果が得られることを確認した. 2)-2.hCAP18/LL-37ペプチドの健常上皮細胞と癌細胞における取り込み経路の解析とシグナル伝達への修飾 hCAP18/LL-37による細胞情報伝達機構の解析を進めるため,上記のhCAP18/LL-37遺伝子導入癌細胞を用いて,hCAP18/LL-37peptideによる反応性をみたところ,Mock細胞では,ペプチドによる殺細胞効果が得られたが,導入癌細胞では反応性が消失した.このことは,hCAP18/LL-37を自ら産生分泌をする細胞では,細胞の維持にhCAP18/LL-37が役割を担っており,また,癌細胞にhCAP18/LL-37を発現させることにより,細胞浸潤や基質分解酵素産生低下をみることから,hCAP18/LL-37が癌抑制遺伝子と同様の機能を担う可能性が示唆された.
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