研究概要 |
インプラントの埋入を目的とした骨増生では自家骨移植が最も有用であるとされている。しかし,大量の移植骨が必要となる場合には骨採取部の侵襲が大きくなることから,低侵襲な骨増生法の開発が望まれている。今回われわれは,培養・増殖させたイヌ由来の骨原性細胞とハニカム型β-TCP(以下37H)を組み合わせた細胞ハイブリッド型人工骨を作製し,この人工骨によるインプラント周囲の骨再生を形態学的に解析した。 実験に用いた37Hは直径3mm,厚さ1mmの円板状に成型され,37か所に直径300mの孔を有するハニカム構造のβTCPである。ビーグル犬6頭の大腿骨骨幹部より骨髄を採取し,比重遠沈法で得られた中間層画分の細胞をD-MEM/10%FBS中で培養し,初期付着細胞を未分化問葉系細胞として使用した。細胞の多分化能は,種々の分化促進培地で分化誘導し,骨芽細胞化,軟骨細胞化および脂肪細胞化すること,さらに各細胞からAPase,osteocalcinなどのmRNA発現を確認することで評価した。各イヌの細胞を個別に培養し、サブコンフルエントの状態の細胞を2×105個/mlの濃度で37Hとともに遠心管内で培養し、rhBHP-2(100ng/ml)を添加して骨芽細胞化を行い,細胞ハイブリッド型人工骨として実験に使用した。 ビーグル犬の下顎骨に7×5mmの骨欠損を形成し,この骨欠損部に直径4mm,長さ11.5mmのTiUniteTMインプラントを4本植立し,その周囲に細胞ハイブリッド型人工骨を移植した。術後4および12週目に下顎骨を摘出し,非脱灰研磨標本を作製して,インプラント周囲における骨反応を観察した。その結果,インプラント周囲には良好な骨形成が確認できた。したがって,骨原性細胞と37Hを組み合わせた細胞ハイブリッド型人工骨はインプラント周囲の骨増生に有用であると考えられた。
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