口腔癌の治療成績は、病変を早期に発見して早期に適切な治療を施せば概して非常に良好であるが、早期癌の発見率は約20%といわれている。そのことは炎症性口腔粘膜疾患や前癌病変との鑑別が困難なことが原因と考えられ、治療の遅れにつながり、予後不良となることがある。早期癌の適切な診断には、前癌病変あるいは早期の遺伝子異常の段階で病変をとらえる必要がある。以前より、我々は口腔癌患者の担癌状態である治療前と、非担癌状態と考えられる治療後(退院時)の患者の唾液を採取し、採取した唾液からタンパク質を抽出し、ProteinChip Systemにより蛋白プロファイル解析を行っており、治療前後の唾液中における蛋白プロファイルの相違を解析することで、担癌状態の唾液中に特異的に発現する新規腫瘍マーカーの同定を試みており、担癌状態で共通して高発現を認める14種類の蛋白を検出している。 口腔癌の治療成績を向上させるため、担癌状態の唾液中に特異的に発現する蛋白をさらに同定・解析し、新規腫瘍マーカーを発見・機能解析することで、唾液による客観性、非侵襲、少量の材料で検査できる簡便な早期癌のスクリーニング方法を開発することを本研究の目的とした。
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