研究概要 |
培養ヒト顎関節滑膜細胞にIL-1βを作用させ、マイクロアレイ解析を用いて発現変動する遺伝子を検索した。その結果、炎症性サイトカインであるIL-6, PGE2合成酵素の1つであるCOX-2、ケモカインメンバーであるMCP-1遺伝子の上昇が認められた。そこで、培養ヒト顎関節滑膜細胞を用いてIL-6, MCP-1, PGE2産生量および遺伝子発現を経時的に検討するとともに、IL-1β投与ラット顎関節滑膜炎モデルを作製し、in vivoでIL-6, MCP-1, PGE2発現の検討を行った。<方法>in vitro:インフォームド・コンセントをえた患者から分離・培養を行った滑膜細胞にIL-1βを作用させ、培養上清中のIL-6, MCP-1, PGE2量をERISA法を用いて測定した。経時的にtotal RNAを抽出し、real-time PCR法にて遺伝子発現を検討した。in vivo:ラット顎関節腔内にIL-1βを投与後、顎関節部の切片を作製した。HE染色、免疫染色を行い、組織学的検索を行った。<結果および考察>in vitro:IL-1βを作用させた滑膜細胞ではIL-6, MCP-1, PGE2産生量は24時間まで経時的に上昇した。これらの遺伝子発現はIL-1β作用4時間がピークであった。in vivo:IL-1βを投与したラット顎関節滑膜部では毛細血管の拡張や炎症性細胞数の上昇が認められた。また、表層滑膜細胞層や血管内の血球に、IL-6, MCP-1, COX-2陽性細胞が認められた。以上の結果から、顎関節滑液中にIL-1β量が上昇すると、滑膜細胞のIL-6, MCP-1, COX-2産生が上昇し、滑膜炎が惹起されるものと示唆された。
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