研究概要 |
中脳辺縁系ドパミン(DA)神経の主たる投射領域の側坐核は,麻薬性鎮痛薬の中枢作用部位のひとつと想定されている。内因性μ受容体アゴニスト候補物質のendomorphin(EM)-1とEM-2のラットの側坐核への灌流投与は,いずれも同部位のDA遊離を増加する。μ受容体アゴニストの示す中枢DA神経亢進は,μ受容体刺激を介したGABA神経の脱抑制によることが示唆されているが,EM類が惹起した側坐核DA遊離における同部位のGABA_A受容体の関与の詳細は明らかでない。そこで本研究では,EM-1またはEM-2が誘発した側坐核DA遊離における同部位のGABA_A受容体の役割を明らかにする目的で,EM類誘発DA遊離へGABA_A受容体のアゴニストのmuscimol(MUC)とアンタゴニストのbicuculline(BIC)が及ぼす効果についてin vivo脳微小透析法にて検討した。 無麻酔非拘束ラットの側坐核より透析プローブで回収したDAは,HPLC-ECD法で分離定量した。各薬物は灌流液中に溶解し,透析プローブを介し逆透析で側坐核に灌流投与した。 その結果,EM-1誘発DA遊離はMUC(250pmol)で促進されたが,BIC(50,500pmol)では影響は受けなかった。また,MUC(250pmol)によるEM-1誘発DA遊離の促進は,BIC(50pmol)の併用で拮抗された。一方,EM-1とは異なりMUCとBICはEM-2(25nmol)誘発DA遊離へは目立った影響を与えなかった。GABA_A受容体のアゴニストはEM-1の効果を促進したがアンタゴニストではそのような効果を示さなかったことから,DA神経終末に局在するGABA_A受容体に対するEM-1の効果は限度近くに達していわゆる床効果を誘発した可能性が示された。また,EM-2はEM-1とは異なるメカニズムで側坐核のDA遊離を増加することが示された。
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