研究概要 |
本研究では生体に近い状態で軟骨細胞培養が可能であるAiginate Beads三次元培養法を用い,IL-1βにより引き起こされる軟骨破壊に対するTGF-βの抑制効果を確認するとともに,軟骨破壊におけるタンパク分解酵素およびその抑制因子の動態を経時的に検討した.細胞周囲マトリックス(CAM)を欠くLacunae数の存在割合を算出し,抗TIMP-1,TIMP-2,TIMP-3各モノクローナル抗体による免疫染色を行った.これらの免疫染色では陽性細胞率も算出した.また,RT-PCRによりTIMP-1,TIMP-2,TIMP-3およびMMP-3の遺伝子発現を確認し,培養液ではGAG,TIMP-1,TIMP-2およびproMMP-3量の測定を行った.その結果,IL-1β刺激によるCAM分解の進行がTGF-βの共存により抑制され,TGF-βによる破壊抑制が確認されたが,その詳細に関してMMP-3のmRNA発現は影響を受けなかった.よって,TGF-βによりTIMPが増加し,これらがMMP-3を含む活性型MMPと結合して破壊を抑制することが示唆された.一方IL-1β刺激に対するTIMP-1とTIMP-3の反応は異なり,TIMP-1は,6時間の陽性細胞率,培養液中の量が最大値となり,その後減少した.mRNA発現も同様の傾向であったことから,炎症初期にはTIMP-1が破壊抑制の役割を担うが,時間とともにTIMP-3がその主体をなす可能性が示唆された.TGF-βの共存では,TIMP-1はmRNA,タンパクレベルでも維持され,TIMP-3もmRNA発現の増強,陽性細胞率の増加傾向を示したことから,TGF-βの破壊抑制にはTIMP-1とTIMP-3が関与すると考えられた.これらの結果より,OAなどの関節疾患では,TIMP-1およびTIMP-3が疾患の進行抑制に強く関与すると考えられた.
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