研究概要 |
まず,in vitroの実験として,ヒト顎関節および膝滑膜由来培養細胞を用いて三次元培養組織を作製し,独自に開発した繰り返し圧縮刺激装置を用いて,クレンチングやブラキシズムに類似した圧縮負荷ストレスを与えた.MMP-1, MMP-3, IL-6, IL-8などの炎症性サイトカインのmRNA発現やタンパク発現の上昇を調べた.さらに,刺激直後,1時間後,6時間後の遺伝子発現の上昇を調べた.その結果,サイトカインの種類により,圧縮負荷刺激後の発現パターンが異なることが明らかになった. in vivoの実験として,学生ボランティアによる正常者の噛みしめ時の脳内賦活部位の解析をfunctional MRI (f-MRI)を使用して行った.その結果,噛みしめ時の脳内地図を得ることができた.さらに,噛みしめ時の不快症状が脳のどの部位で感知されているかどうかを調べるため,噛みしめのタスクに加え,片側を浸潤麻酔および伝達麻酔を行い,歯根膜からの感覚を遮断し,その上で噛みしめ時のf-MRIを撮影し、SPM-5で解析を行った.結果,片側の感覚遮断により,半体側の一次体性感覚野および運動野に賦活化が認められた.また両側の感覚遮断を行うことにより,脳の両側の体性感覚野および運動野の賦活領域の拡大がみられた.このことにより噛みしめ時の歯根膜からの感覚刺激が賦活化する脳の領域が明らかになった.
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