研究概要 |
本研究は正常唾液腺培養細胞の長期培養を目指した培養法の開発と放射線照射後の萎縮腺組織への唾液腺細胞の移植による再生治療の可能性を検討することを目的とした。ヒト顎下腺より得られた正常細胞は、継代を続けていくと8継代目に細胞増殖速度が急速に低下する。これは細胞培養によりp16が増加した結果、RB経路が停止する細胞老化であることを明らかにした。そこで、われわれは本培養細胞にmutant CDK4, cyclinD1, human Telomerase Reverse Transcriptase(hTERT)の3つの遺伝子を導入することで不死化に成功した。本培養細胞を放射線照射により唾液腺を破壊したヌードマウスに対し移植を試みたが、唾液腺は再生しなかった。さらにヒトの放射線治療後の唾液腺が再生のニッチとなりうるかを免疫組織学的に検討したところ、放射線照射後の唾液腺にはEGFが発現しておらず、唾液腺細胞を再生させるためのニッチとしては不十分であることが確認され、現在考えられている細胞移植による唾液腺再生は困難であると考えられた。
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