研究課題
基盤研究(C)
腫瘍の転移は悪性腫瘍の治療においてその予後に影響する最も重要な因子であり、口腔悪性腫瘍の大部分を占める扁平上皮がんの治療にあたっても、転移の有無が予後と深く関わっている。口腔扁平上皮がんの転移の大部分は所属リンパ節である頸部リンパ節へのリンパ行性転移で、その治療にあたっては原発巣とともに転移したリンパ節の制御が必須であり、とくに現在画像診断的に検出が困難である径5mm以下の微小リンパ節転移の有無を術前に知ることが可能であればその意義は大きい。今回の検索は、口腔がんにおける転移形質に関与する遺伝子/遺伝子産物の同定を行うことを第一の目標としている。ヒト口腔正常粘膜上皮、白板症、口腔がん組織より試料を採取し、直ちに液体窒素で凍結保存を行い、以後の実験に用いた。試料の一部よりRNAを抽出しDNAマイクロアレイにより網羅的解析を行ったところ、数十の発現亢進する遺伝子および発現が低下した遺伝子が認められた。これらの中で口腔がんで発現が亢進しているPim-1に注目して検索を行った。口腔扁平上皮がん細胞株6種全てにPim-1のタンパク発現が認められた。北海道大学病院で口腔扁平上皮がんと診断された早期がん症例39例についてPim-1の発現を検索したところ17例(44%)にPim-1発現が認められた。Pim-1発現症例は有意に所属リンパ節転移、遠隔臓器転移が多く、Pim-1発現と転移の関連性が示唆された。転移形質とPim-1の関連を探るため、siRNAを用いて検討を行った。その結果、Pim-1に対するsiRNA導入細胞では細胞運動能の低下がみられ、この際にRac1の活性が低下することが明らかになった。以上の結果は、Pim-1はRac1の活性化により口腔がん細胞の運動能を高め、転移形質に深く関与しており、Pim-1をターゲットにした画像診断の有用性を示唆するものだった。
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Mol Med Rep (in press)