研究課題
本研究では病理診断におけるCD109抗体のSCCマーカーとしての有用性を確立し、血清診断における分泌型CD109の血液腫瘍マーカーとしての有用性を確立する。さらにCD109の発現とSCC発生の関係を分子生物学的に解析することを目的とする。研究方法は悪性疾患を疑い切除した口腔癌臨床検体の組織切片を、精製した抗CD109で免疫染色し、発現度と組織型・臨床象との相関を統計学的に検討した。ヒトCD109遺伝子を発現ベクターに組み込み培養細胞に発現させ、CD109の機能および細胞の癌化との関連を検討した。その結果、口腔組織検体124例のCD109発現解析の結果、各組織型における陽性例/総数は、正常:0/8異型上皮:18/22in situ:8/8高分化SCC:39/39中分化SCC:16/18低分化SCC:7/11その他の口腔悪性腫瘍:4/18となり、SCCの中でも高分化型のもので発現上昇していた。臨床像と発現について相関性を検討したところ年齢・性別、喫煙・飲酒・Stage分類・5年生存率で検討したが有意な相関を認なかった。異型上皮では3年の経過観察期間内にSCCへ悪性化した群で有意に発現上昇していた(p=0.014)。口腔癌細胞株SAS細胞へ、CD109遺伝子を組み込んで高発現クローンを樹立した。細胞増殖能を検討したところコントロール株と比較して有意に亢進していた。CD109がTGFβ受容体複合体の一因子であるとの報告があったためTGFβシグナル伝達系(Smadのリン酸化)への影響を検討したところ、CD109高発現株で下流シグナルが抑制され、逆にCD109ノックダウン細胞で下流シグナルの増強を認めた。CD109はTGFβシグナルを抑制的に制御していることが判明した。その他、CD109結合タンパク質の同定をYeast two Hybrid法にて試みたが、細胞の癌化に結び付くと思われるタンパク質は同定できなかった。
すべて 2008
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