研究分担者 |
鎌田 伸之 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242211)
小野 重弘 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (70379882)
重石 英生 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90397943)
三谷 佳嗣 広島大学, 病院, 歯科診療医 (30432678)
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研究概要 |
ヒト扁平上皮癌細胞において,転写因子SnailがE-カドヘリンの発現を抑制してEMTを誘導し,癌細胞は高度浸潤能を獲得するが,Snailは癌抑制遺伝子p53のファミリー遺伝子であるp63の発現を抑制する.p63をノックダウンすると癌細胞の浸潤能が充進し,それにはE-カドヘリンの発現抑制は伴わなかった.これはp63の発現抑制による浸潤能が充進にはEMTとは別のメカニズムが働いていることが推測され,このメカニズムを解明するためにp63の下流遺伝子を検索した。転写抑制因子IdはbHLH型転写因子であるE2Aを抑制することが知られているが,このファミリー遺伝子のひとつであるId3がp63のノックダウンによって発現が抑制されることを見いだした.そこで高度浸潤能を示すEMT細胞にp63を過剰発現させるとId3が誘導され,さらにEMT細胞にId3を過剰発現させると浸潤能が有意にブロックされた.しかもId3によってE-カドヘリンの発現は誘導されなかった.これはId3がE2AのE-カドヘリンの発現抑制能を抑制するにもかかわらず,つまりIdの過剰発現はE-カドヘリンの発現を誘導するのだが,Snailが有意にE-カドヘリンの発現を抑えることをプロモーター解析で示した.この結果はE-カドヘリン非依存性の浸潤能獲得のメカニズムの一端を示すものであった.またId3は細胞外基質分解酵素MMP2の発現を抑制することを見いだし,そのメカニズムとして転写因子Ets-1依存性であること,そのEts-1依存性Id3発現はp63で抑制されることがわかった.
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