本研究は当教室において樹立した口腔扁平上皮癌細胞(BHY、B88、HNt細胞)を用いた。前年度に得られた結果をもとに、口腔癌細胞の増殖過程におけるVEGFの役割を明らかにし、プロテアソーム阻害剤bortezomibとVEGFに対する分子標的治療法を開発することを目的とした。VEGFファミリーの中で、血管新生を促進するVEGF-Aとリンパ管新生因子であるVEGF-CとIL-8 mRNAの発現をreal-time RT-PCR法を用いて定量した。VEGF-A、VEGF-C、IL-8 mRNAの発現はすべての癌細胞(BHY、B88、HNt)に認められ、bortezomibはその発現を抑制した。さらに、放射線照射で誘導された発現も抑制する傾向にあった。ELISA法を用いたVEGF-AとIL-8蛋白の発現も同様の結果を示した。造腫瘍性があるB88細胞を5週令BALB/c雌ヌードマウスの背部皮下(1×10^6個細胞)に移植し、bortezomib(0.1mg/kg)の静脈内投与による経時的な腫瘍体積を測定した結果、bortezomib投与によって腫瘍体積と腫瘍内血管密度は有意に抑制された。さらに、放射線照射によってVEGF-AとIL-8蛋白の発現は誘導されたが、bortezomib投与は腫瘍内それらの発現を有意に抑制し、腫瘍増殖も抑制した。すなわち、口腔癌細胞に対して、bortezomibはVEGF-A、IL-8蛋白の発現抑制を介し、腫瘍増殖を抑制する可能性が示唆できた。さらに、口腔癌に対するVEGFの阻害剤はbortezomibとの併用することによって、相乗的な腫瘍増殖抑制効果が期待できた。
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