従来、歯原性腫瘍の治療には顎切除術あるいは腫瘍周囲の顎骨を含めた根治的摘出術など徹底した病巣除去を目的とした外科的手術が行われてきた。しかしながらこの方法では術後に形態や機能の回復が困難な場合もみられるため開窓療法を行って、ある程度の大きさまで縮小させてから摘出を行う方法が取られるようになってきた。開窓療法は有効な治療法ではあるが、2度の外科的侵襲と長期間を要することが短所である。そこで歯原性腫瘍内に直接注射を打つ程度の筒単な処置を施すだけで、腫瘍の発育に大きく関与している因子を取り除くまたは不活化させ、大きな外科的侵襲を加える事なく、この腫瘍を縮小ないし消滅させる事を可能にするという方法を開発するのが本研究の目的である。そのためにはこの発育因子を特定し、増大機構を解明し、これを応用する事が、新しい治療法を確立する上で極めて重要である。 申請者らのこれまでの研究において、角化嚢胞性歯原性腫瘍(KCOT)における上皮細胞の増殖・分化誘導にInterleukin-1α(IL-1α)やKeratinocyte grovth factor(KGF)が大きく関与していることを示してきた。そこでこの事を応用してIL-1αやKGFのレセプターと同じ塩基配列を持つものを中和抗体として開発中である。IL-1αやKGFについては塩基配列がわかっているので、E. coli(大腸菌)にIL-1aやKGFのレセプター特有の塩基配列を組み込んで繁殖させることにより、安価で大量に生産する事が可能となる。この中和抗体をKGFやIL-1αの産生細胞近隣に大量投与することにより、KGFやIL-1αの働きを無効にする事が可能と考えられる。これにより発育阻害が可能となり、最終目標である腫瘍を縮小ないし消滅させる事が可能となる。
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