研究概要 |
腺様嚢胞癌(ACC)は頭頚部腫瘍において病理学的に1%を占める比較的まれな唾液腺腫瘍である。ACCは通常緩徐に増殖するが高悪性に浸潤、転移する。ACCには3つの組織型が存在する。(篩状型,管状型,充実型)臨床的には悪性度はこの3つによって推し量られるといわれており、充実型は他の2型よりも生存率などの因子において予後不良といわれている。病理所見がいずれであっても、外科切除後数十年たって、肺などの臓器に遠隔転移をおこすことが多いが、そのメカニズムは解明されていない。 転移は悪性腫瘍患者において、主要な死因である。腫瘍がどのように浸潤、増殖し、血管新生を開始し、新たに転移臓器に定着して増殖していくには複雑な過程を経ているといわれている。CXCR4はSDF1α(CXCL12)をリガンドとするケモカインレセプターである。CXCL12は複数の臓器、皮膚、リンパ節、肺、肝、骨髄に存在している。CXCR4は乳がん、悪性黒色腫の転移においてその働きが指摘されている。 腺様嚢胞癌において臨床検体、ヌードマウス可移植性腺様嚢胞癌株を用いてCXCR4との関係を検討した.その結果CXCR4が高発現していた患者は肺転移がみられ予後が悪かった.病理組織学的に充実型と転移がみられた篩状型はCXCR4の発現が高かったが、管状型と転移がみられなかった篩状型は低かった.継代により組織型が篩状型から充実型に変化するヌードマウス可移植性腺様嚢胞癌株ではCXCR4発現の上昇が見られた.また、自然転移ヌードマウス可移植性腺様嚢胞癌株において親株より転移株でCXCR4が高発現であった.これらのことから、腺様嚢胞癌の転移や予後および組織型とCXCR4には特に強い関連があることを報告した。今後このCXCR4が腺様嚢胞癌の腫瘍マーカーの一つになる可能性があると考えられる。
|