研究概要 |
内分泌撹乱物質が脳形成段階、発達時期に影響を及ぼすことにより軽度発達障害等を引き起こす要因になっている可能性については今現在明確に否定する報告はない。一方、軽度発達障害の1つである注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder,ADHD)は治療に用いる中枢刺激薬methylphenidateがドパミン神経終末に存在するドパミントランスポーター(DAT)に作用することからADHD発症にDATが関与する可能性が示唆されている。そこでドパミン神経系を中心に内分泌撹乱物質が脳形成時期に及ぼす影響について明らかにすることを本研究の目的としている。 本年度、in vivoの系で、妊娠マウスにビスフェノールA(BPA)を2種類の濃度で摂食させ、胎児期にBPA暴露されたマウスを作成し、アニメックスを用いて5週齢時に行動解析を行ったところ、BPA暴露により多動になる傾向が認められた。この行動とDATの関係を明らかにするため免疫学的検討を行っているが、現在条件設定について検討中である。この行動変容に関しては加齢による影響も検討中である。BPAの影響についてはドパミン神経系に直接的に作用するだけでなく、脳内ネットワークを介して作用する、あるいはエピジェネティックに作用することを示唆する報告もあり、invitroの系で、13日胎児脳より調製した初代神経細胞を用い、分化や細胞死への影響に関して検討を行っている。低濃度BPA暴露により分化マーカーであるMAP2の発現はBPA濃度依存的に増加する傾向が認められた。MAP2発現調節へのBPAの関与に関し、MAP2遺伝子上流部分の転写領域について検討を行っている。 いくつかの点で検討中であるが、BPA誘発による行動変容の原因の1つとしてMAP2の増加、すなわち神経突起の増加/伸長が関与している可能性が考えられる。
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