研究概要 |
当該研究3年目として、これまでに作成した「リン酸亜鉛より誘導したリン酸亜鉛カルシウムを亜鉛供給源として用いた亜鉛徐放性セメント」の材料学的検討と、骨芽細胞への影響を検討した。 1. 亜鉛徐放性セメントの材料学的検討 第2リン酸カルシウムと第4リン酸カルシウムより得られたアパタイトセメントに種々の濃度のリン酸亜鉛カルシウムを添加(10,30,50wt%)した。リン酸亜鉛カルシウムの濃度が高くなるにつれ、セメントより放出される亜鉛の濃度は上昇するものの、セメント硬化体中の結晶相はリン酸亜鉛カルシウムの濃度依存的にハイドロキシアパタイトの結晶成長が遅延し、リン酸亜鉛カルシウムの含有量が50wt%の場合ハイドロキシアパタイトの形成は観察されなかった。また、セメント硬化体の硬化時間はリン酸亜鉛カルシウムの含有量が10wt%の場合が最長であったが、強度は、2週間の観察では10wt%のセメントが最大となった。 2. 亜鉛徐放性セメントの骨芽細胞への影響 1のセメント硬化体上で、生体内で骨形成を司る骨芽細胞を培養した。骨芽細胞の増殖試験ではリン酸亜鉛カルシウムの含有量が10wt%の場合に最大で、30wt%を超えると細胞は死滅した。また、ALP活性を測定したところ増殖試験の結果と同様にリン酸亜鉛カルシウムの含有量が10wt%の場合に最大となった。現在はセメント上で培養した骨芽細胞の遺伝子発現を解析中である。
|