研究課題
矯正臨床では成長発育期のその後の成長による顎顔面形態を推測することが診断に求められる。顎顔面形態は強い遺伝性を有しているのでこれに関与する遺伝子の存在が窺い知れる。特に下顎頭部の成長発育は下顎骨形態の決定に深く関与する。一方、下顎頭部においての成長ホルモン受容体は領域特異性をもって発現、その成長発育に関与することが知られている。研究代表者らはこれまでに健常日本人成人について成長ホルモン受容体遺伝子(GHR)が下顎骨高さに関与することを明らかにしている。さらに東アジア人集団として326人(韓国人159人、日本人167人)を対象者としてGHRの一塩基多型(SNP)をダイレクシークエンス法にて同定した。側面頭部X線規格写真より顎顔面形態に関する計5項目について計測、GHR多型との関連を統計学的に検討した。本研究は昭和大学ヒトゲノム遺伝子解析倫理委員会、釜山国立大学関連委員会の承認を得て実施した。GHR遺伝子のSNPsと下顎枝の長さとの間に統計学的に有意な関連が認められた。その関連は日本人集団と韓国人集団は極めて近似していた。しかし、関連するSNPsの出現頻度はコーケシアンなどの他の集団では大きく異なっていた。顎顔面形態は人種的差異が存在する。本研究結果はその理由の一部分を説明するものであるかもしれない。現在、引き続き頭蓋顎顔面形態に関与する遺伝子について検索・解析中である。関与する遺伝子は複数、存在することが推測されている。これらを明らかにしてゆくことによって、矯正臨床に応用しうるものにすることを目標とする。