研究概要 |
【目的】近年、骨免疫学という概念が提唱され、免疫学の主役であったTNF関連サイトカインやTリンパ球が、直接破骨細胞による骨吸収を調節するという知見が集積し、リウマチ骨破壊には滑膜線維芽細胞とT細胞の発現する破骨細胞分化因子RANKLが相乗効果で骨破壊を促進する。さらに、当講座では重度歯根吸収者由来培養歯根膜線維芽細胞が持続的圧縮力に対して,RANKL産生と骨吸収能の増加を報告し、また日本人の重度歯根吸収者は喘息とアレルギー患者に多く、矯正治療中の歯根吸収の発生に免疫システムの関与が示唆されている。そこで、本研究ではラットに歯根吸収を起こし、破骨細胞活性化マーカーとT細胞分子マーカーの発現について検討を行った。【方法】Wistar系雄性ラットの上顎第一臼歯をcoil splingで10g、30gの矯正力で7日間近心側へ牽引し、歯根吸収を起こさせた。当該部のパラフィン包埋切片は、RANK、RANKL、macrophage colony-stimulating factor (M-CSF), M-CSF receptor (c-fms), metalloproteinase-9 (MMP-9), cathepsin K, CD4, CD8, interleukin-17 (IL-17)抗体を用い免疫組織化学的染色を行った。【結果および考察】移動7日目において、10gと30gの矯正力を加えた臼歯の圧迫側歯槽骨辺縁に、破骨細胞とRANK, RANKL, c-fms, M-CSF, MMP-9, cathepsin K, CD4およびIL-17抗体陽性細胞がみられ、30g群においてそれらの染色性は増強された。 【結論】矯正学的歯の移動時の歯根吸収の発生にはT細胞とT細胞より産生されるIL-17も関係していることが示唆された。
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