研究概要 |
【目的】日本人の重度歯根吸収者は喘息とアレルギー患者に多く、矯正治療中の歯根吸収の発生に免疫システムの関与が示唆されている。最近、骨破壊を引き起こすヘルパーT細胞としてのTh17細胞の重要性が明らかになり、T細胞が産生するinterleukin-17 (IL-17)は滑膜細胞のRANKL発現を誘導することから、本研究ではラット歯根吸収部の炎症性サイトカインとIL-17の発現について検討した。 【方法】Wistar系雄性ラット上顎第一臼歯をcoil springで10g、50gの矯正力で7日間近心側へ牽引し、歯根吸収を惹起させた。当該部のパラフイン包埋切片は、RANK (receptor activator of NF-κB)、RANKL、macrophage colony-stimulating factor (M-CSF), M-CSF receptor (c-fms),IL-1 beta, IL-6, IL-17, IL-17 receptor (IL17R), CD4抗体を用い免疫組織化学的染色を行った。ヒト歯根膜由来細胞(hPDL cells)にIL-17(0-100ng/ml)を24時間作用させ、RANKL, OPGの遺伝子発現と培養上清中の産生量を検討した。【結果および考察】移動7日目において、10gと50gの矯正力を加えた臼歯の圧迫側歯槽骨辺縁と歯根吸収部に破骨(歯)細胞とRANK, RANKL, c-fms, M-CSF, IL-1 beta, IL-6, IL-17, IL-17R,CD4抗体陽性細胞がみられ、50g群においてそれらの染色性は増強された。hPDL cellsはIL-17刺激により、RANKL産生量は経時的及び濃度依存的に増加した。【結論】矯正学的歯の移動時の歯根吸収の発生にはIL-17/RANKLが深く関与していることが示唆された。
|