咬耗が遺伝要因を受けるか否かを検討し、遺伝要因を受けるのであれば主要因となる候補遺伝子座を明らかにすることが本研究の目的である。当該年度以前のマウスを用いた研究から遺伝要因が関与していることを再確認したことから、当該年度では咬耗に対して高感受性マウスであるC3H系統と低感受性であるB6マウスの親系統数を増やし、交雑を行いF2マウスを100匹以上得ることができた。まず、rough mappingの目的でpool DNA法を用いたところ、咬耗に対する主要候補遺伝子がマウス染色体4番と13番に有意な連鎖が認められたことから、両染色体に対してdetail mappingを行ったところD4Mit13とD13Mit9付近に存在することが強く示唆されたことから、現在、論文投稿による論文作成中である。なお、咬耗は咀嚼様相を受けることから咬筋付着部位である下顎骨の大きさの違いが咬耗にも影響すると考えたところ、高感受性マウスは低感受性マウスより下顎骨が大きいことが認められたことから、RIマウスを用いて連鎖解析を行ったところ、マウス染色体13番に有意な連鎖を認めた。咬耗も下顎角も全染色体を網羅的に連鎖解析した結果マウス染色体13番が共通して連鎖しており、第13番染色体上の遺伝子マーカーD13Mit130の近傍にOcln遺伝子ならびにFgf10遺伝子がmapされていることから候補遺伝子となり得る可能性が示唆できた。 一方、神経線維腫疾患における口腔内の特徴の一つに咬耗があることから、神経線維腫1型の患児の遺伝子解析を行い、原因遺伝子であるNF1の欠失型と変異型に分類し、口腔内所見の違いについても検討し、報告した。また、咬耗とう蝕はエナメル質の形成等に関与することからう蝕発症の原因遺伝子についてもマウスで検討し、報告した。咬耗は咬合異常によっても発現することから、小児の咬合異常の代表的といえる臼歯部交叉咬合児の口腔模型を検討しさらに脳機能についてもヒトを用いて検討した結果を報告した。
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