研究概要 |
ダウン症候群(DS)は「生活習慣病」である歯周病,動脈硬化が早期より進行することや糖尿病への罹患率が高いことが報告されている. そこでDS患者の唾液を用いて,酸化ストレスマーカーである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)の産生量をELISAにて測定し,健常者(C)と比較検討した.平均年齢はDS-1(12歳以下)群4.31±2.94歳,DS-2(30歳以以上45歳以下)群35.13±3.14歳,C-1群7.36±2.25歳,C-2群40.3歳±3.37歳であった.ポケットの深さは1群間,2群間では有意差を認めず,DS群間,C群間ではともに1群に比較して2群で有意(DS群:p=0.0018,C群:p=0.036)に高値を示した.8-OHdGの産生量はC群に比較して,DS群で有意(1群:p=0.049,2群:p=0.049)に上昇し,また1群に比較して,2群で有意(DS群:p=0.041,C群:p=0.045)に上昇した.加齢により進行する歯周疾患の指標のポケットの深さと8-OHdGの産生量に相関がみられた.DS群で8-OHdGの産生量がC群より上昇していることは,DSでは幼少時より酸化ストレスが亢進していることが確認された. さらにDSのプラークを採取し,PCR法を用いて歯周病原菌の1つであるPorphyromonasgingivalis(P.g.)の検出を行った.対象は平均年齢2.86±1.46歳,ポケットの深さ1.24±0.43,のDS患児である.いずれのサンプルからもP.g.は検出されなかった.非常に低年齢のDS患児では感染が起きていない可能性が考えられた.但し,プラークの採取が困難な症例もあり,更なる検討の必要もある. P.g.の定着状況は歯周疾患の指標となり,今後さらに年齢層を広げ,8-OHdGとの相関について検討を進めていく.
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