研究概要 |
Wntは初期発生や生体組織の機能維持に至る様々な局面で機能する分子である。近年、Wnt/β-cateninシグナル経路は骨芽細胞の分化誘導において重要なシグナルであることが報告されてきたが、同シグナルは骨芽細胞の完全な分化を誘導するというよりむしろ骨分化の方向づけ(commitment)の役割を有すると考えられている。申講者らはWnt/β-cateninシグナルがセメント芽細胞の分化に与える影響について検討するとともに、Wntシグナルの調節因子であるwnt antagonistの発現の可能性についても解析した。 方法:LiCl_2(0,10,20mM)およびwnt protein存在下で培養(5%FBSD-MEM plus 50μg/mlアスコルビン酸)し、アルカリフォスファターゼおよび細胞外マトリックス(オステオカルシン、骨シアロ蛋白、1型コラーゲン)の発現をリアルタイム定量PCR法にて経時的(Day 0,1,2,4)に解析した。また、細胞分化過程におけるWnt antagonistの発現は50μg/mlアスコルビン酸存在下におけるin vitro細胞培養分化モデルをもちいて、secreted frizzled-related proteins(SFRPs)1-4の発現をリアルタイム定量PCR法にて経時的(Day 0,2,4,6)に解析した。 結果:(1)LiCl_2およびリコンビナントwnt3a protein濃度依存的にアルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、骨シアロ蛋白、1型コラーゲンの発現は抑制された。(2)SFRP-1および-3の発現は検出できなかったが、SFRP-2および-4は分化誘導開始後4日目をピークに発現が亢進した。 これらの結果から、Wnt/β-cateninシグナルはセメント芽細胞の分化に対して負の方向に作用することが明らかとなった。またセメント芽細胞は細胞分化過程においてSFRP-2および-4などのwnt antagonistの発現を介して、wntシグナルを調節している可能性が示唆された。
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