研究概要 |
1.ヒト歯周炎組織における制御性B細胞サブセットの検索:歯周炎罹患歯肉組織を10例採取し、凍結切片を作製しT細胞、B細胞の浸潤の程度を免疫二重染色により確認した。そのうち3例からレーザーキャプチャー顕微鏡にてT細胞浸潤領域、B細胞浸潤領域の細胞を回収してRNA抽出し、CD3,CD19,CXCL13のRT-PCRを行い、実験手技を確立した。 2.ヒト歯周炎組織における炎症性ケモカインと恒常性維持ケモカインの発現解析:ヒト歯周炎歯肉組織中のケモカインの発現とB細胞および制御性細胞の集積の相関を明らかにするため、慢性歯周炎患者23名、歯肉炎患者20名より歯肉組織を採取し、RT-リアルタイムPCR法によりケモカインとそのレセプター発現を解析した。CD19,CXCL13,CXCR5,CCL21,CCL5,CCR4,IL-10,IL-17AのmRNA発現は歯周炎群において歯肉炎群よりも有意に高かった。 CXCL13,CXCR5,CCL5,CCR7,CCR6のmRNA発現はCD19発現と有意な正の相関を認めた。一方、IL-17AとCCR4についてはCD19発現との有意な相関は認められなかった。歯周炎組織ではCXCL13,CCL21の増加を認め、炎症の慢性化とともにリンパ節類似の機能を備える可能性が示唆された。CD19とIL-17Aの発現には相関が認められないがIL-10とは相関が認められたことより、B細胞浸潤が著しく優勢な組織は急激な骨吸収よりも炎症の安定恒常化に傾いてる可能性が示唆された。 3.歯周炎モデルマウスの作製:C57BL/6マウスにPorphyromonas gingivalis W83株を口腔内より接種し、6週間後に顎骨を切り出し歯槽骨吸収レベルを調べた。コントロール群と比較して有意な歯槽骨吸収が認められることをマイクロCT画像による計測で確認した。
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