研究概要 |
平成19年度の研究課題に関する研究実績は以下のとおりである。 1.コンピューターによるncRNAの配列予測と同定 比較ゲノム解析に基づいた大腸菌のncRNA予測配列と,これまでに同定されている大腸菌のncRNA配列をデータベースから集積した。これらの配列をPorphyromonas gingivalisならびにAggregatibacter actinomycetemcomitansのゲノムデータベースに照合し,相同性分子の検索を行った。結果A. actinomycetemcomitansのゲノム上に大腸菌の8種類のncRNAと高い相同性を示す(60%以上)塩基配列を同定した。さらにRT-PCR法でこれらの遺伝子領域が転写されていることを明らかにした。P. gingivalisのゲノムには大腸菌ncRNAとの相同性分子は存在しなかった。 2.A. actinomycetemcomitansのRNAシャペロン欠損株の作製と蛋白質発現の解析 A. actinomycetemcomitansのRNAシャペロンhfqとrsmAの欠損株を相同性組み換え法によって作製した。欠損株の蛋白質発現プロファイルを2次元電気泳動で調べた結果,親株と比較して,複数の蛋白質スポットで発現量が大きく変化していることが分かった。発現量の差は最大で32倍に及び,RNAシャペロンを欠損させることによって,発現量の増加するスポットの割合が高い傾向にあった。 これらの結果は歯周病細菌がncRNAを保有していること,そしてncRNAによる遣伝子発現調節機構の存在することを示すものである。また,欠損株のプロテオーム解析からncRNAによる発現調節は大腸菌と同様に主にRNAサイレンシング機構に基づくものである事が示唆された。系統的に離れた種であるP. gingivalis大腸菌と異なるncRNAを保有しているのかもしれない。
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