研究概要 |
病態の異なる慢性歯周炎患者と侵襲性歯周炎患者より歯肉溝浸出液(GCF)を採取し,インターロイキン-1β(IL-1β)と可溶性IL-1タイプ2レセプター(type II R)をELISA法にて測定したところ,IL-1βの検出率ならびにその濃度は両群間においてほぼ同程度であったのに対し,可溶性IL-1type II Rは侵襲性歯周炎患者の方が理由はまだわからないが,検出されにくい場合が多かった.しかし検出された被験歯でのIL-1type II R濃度は両疾患群でほぼ同程度であった.なお詳細についてはSoluble Interleukin-1 Receptor Type II Levels in Gingival Crevicular Fluid in Aggressive and Chronic Periodontitis. J Periodontol, 79; 495-500, 2007に公表した.現在,この現象はどんなメカニズムによって制御されているかを形態学的にまた培養細胞を使ったin vitroの実験系により,遺伝子とタンパクレベルでの解析を進めている.またIL-1type II R遺伝子を候補遺伝子としてその遺伝子多型と歯周炎との関連解析を進めたところ,歯周病という罹患率の高い疾患としては妥当なアリル頻度を有する3つの遺伝子多型を発見し,さらに統計学的に有意なハプロタイプ見いだすことができ,現在投稿準備中である.臨床的に侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の鑑別はその発症年齢に依存しているしたがって,今回明らかになった結果をもとにGCF中の可溶性IL-1type II Rの測定と遺伝子多型の検査ができるようになれば,歯周炎の進行の程度や,予後予測の正確な把握に反映されるだけでなく,歯周炎に対する感受性が高く,その罹患がハイリスクである者を早期に抽出できるようになると考えられる.
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