研究概要 |
本研究は、マウス唾液腺におけるT細胞非依存性抗原に対する自然抗体IgA誘導のための粘膜アジュバントの役割とその作用メカニズムを解明することを目的としている。これまで我々は、実験マウス群にT細胞非依存性抗原(TNP-LPS)と粘膜アジュバントであるコレラトキシン(CT)を、対照マウス群にTNP-LPSのみを経鼻投与する系を用いることにより、CTが粘膜部におけるT細胞非依存性抗原特異的IgA抗体を誘導し、そして、唾液腺、鼻腔粘膜部において誘導されたIL-5レセプター発現sIgA^+B1 B細胞とCD4^+T細胞間でのIL-5-IL-5Rを中心としたTh2型サイトカインクロストークにより、CTが獲得免疫系だけでなく自然免疫系においてもアジュバント活性・賦活化作用を有することを示唆してきた。(Kataoka K. et al., Journal of Immunology, 07)引き続く同マウスモデルの解析では、NALT、唾液顎下腺、鼻腔粘膜において、成熟樹状細胞が有意に誘導され、T細胞非依存性抗原に対するIgA抗体のクラススイッチング(CSR)が促進誘導している可能性が示されたため、本年度は各粘膜組織におけるB1 B細胞のCSRのメカニズムを樹状細胞を中心に検討を試みた。CT投与マウスのNALT、唾液顎下腺、鼻腔粘膜からの樹状細胞上において、APRIL分子の発現がコントロール群と比較して有意に上昇し、またその受容体であるTACI分子、BCMA分子がB1 B細胞上において有意な発現が認められた。さらに各粘膜組織からの樹状細胞とIgA^- B細胞をin vitroでTGF-β,IL-5とともに共培養することによりIgA^+B細胞数の増加が示された。以上より、IgA抗体産生B細胞のCSRには、粘膜部樹状細胞の重要性が示唆された。
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