研究概要 |
本年度は,唾液線マッサージの唾液腺機能への影響を明らかにするため,若年健常者(成人女性37名,21.0±2.2歳)を対象に,1.唾液腺マッサージ直後の唾液分泌に対する効果の検討,2.分泌タンパク質への影響などの検討,3.唾液腺マッサージに対する実態調査を行った。研究にあたり,唾液腺マッサージ方法を考案し,手技の統一化を図るためにリーフレットを作成し,方法の説明に用いた。研究に際し,唾液腺マッサージを自分自身で行う場合を自己マッサージ,他者が唾液腺マッサージを施術する場合を他者マッサージとした。その結果, 1.唾液腺マッサージ直後の唾液量増加効果は,自己マッサージ直後の増加者は64.9%,他者マッサージ直後では8.1%で,他者マッサージよりも自己マッサージにみられた。 また,自己マッサージによる唾液量増加者の平均安静時唾液量は0.73g/3min,減少者は1.34g/3minで,両群間に有意差があり(p<0.05),唾液量増加効果は,安静時唾液量の少ない者に顕著であることが判明した。 2.唾液腺マッサージと酸刺激により,一部の若年者に唾液タンパク質の増加がみられた。 3.実態調査では,人に触れられる嫌悪感があり,他者マッサージ時は緊張し,自己マッサージを好む傾向が強かった。唾液流出感は,自己マッサージにより92.0%の者が,マッサージ中の唾液流出感があると答えた。 これらのことより,若年者に対する唾液腺マッサージの有効性が示唆されたが,最終年度となる来年度は,高齢者を対象に同様の検討を行い高齢者に対する有効性について確認するとともに,1.唾液腺マッサージの長期間の効果について,2.唾液腺の唾液分泌予備能力の有無について,3.唾液タンパク質の分析等を行い,唾液腺マッサージが口腔健康維持に役立つ可能性について検討を進めたい。
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