研究課題/領域番号 |
19592408
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 幸江 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教 (30274476)
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研究分担者 |
山下 喜久 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (20192403)
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キーワード | う蝕 / ミュータンス連鎖球菌 / 耐酸性 / キナーゼ活性 / undecaprenol / diacylglycerol kinase inhibitor I / diacylglycerol kinase inhibitor II |
研究概要 |
昨年度の研究結果より、Streptococcus mutansの耐酸性とジアシルグリセロールキナーゼ(Dgk)ホモローグのundecaprenolに対するキナーゼ活性との間には密接な関係があり、pH5.5で生育できないDgk変異株において発現している変異型Dgkはキナーゼ活性を消失していることがわかった。本年度はまず、Dgk変異株のう蝕原性について調べたところ、Dgkの変異は平滑面齲蝕の発生を著しく減少させることがわかった。この結果は、Dgkのキナーゼ活性に対する阻害剤が齲蝕予防剤として有効であることを示唆している。そこで、本研究の最終目的である齲蝕細菌の耐酸性因子阻害剤の開発を目指した。真核生物のDgk活性に対してはすでにDiacylglycerol kinase inhibitor IとIIが阻害剤として知られており、IIはIのアナローグで、Iよりも阻害効果の強いことが確認されている。これら2つの阻害剤を用いて、S.mutansの耐酸性に与える影響ならびにDgkのキナーゼ活性に対する阻害効果を調べた。生育阻害については、pH5.5ではIもIIも生育阻害効果を示さなかった。培地のpHを下げていくにつれて、Iの添加は若干の生育阻害をもたらしたが、有意差はなかった。これに対して、IIの添加は著しくS.mutansの生育を阻害し、pH5.3では50%以上の阻害効果が認められた。一方、Dgkの活性に対しては中性条件ではともに阻害効果を示さなかったが、pHを少し下げると(pH6.4)、 inhibitor IIの方に20%程度の活性阻害が認められた。この結果はS.mutansの耐酸性への影響と一致しており、inhibitor IIの齲蝕予防剤としての有用性が示唆された。
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