本研究では、(1)安静時、(2)食事摂取後(食後)、(3)食事時間を制限した状態で食事摂取後(課題食後)の3つの状態において唾液を採取し、コルチゾール濃度およびα-アミラーゼ濃度を測定した。 食事は食パン1枚(約60g)とし、(2)の状態で食事時間を計測し、(3)ではその時間よりも短い時間で食べるように指示を行った。 測定したコルチゾール濃度およびα-アミラーゼ濃度では、いずれのマーカーでも安静時濃度が最も低い値を示した。また、食後はα-アミラーゼ濃度が安静時の濃度と比較して有意に高くなったものの、コルチゾールの濃度は変化しなかった。課題食後はいずれのマーカーも安静時および食事摂取後と比較して著明に高い値を示した。 次に、通常時の食事時間と課題食時の食事時間との比率を、ストレスマーカーの濃度の比率と比較した。コルチゾール濃度では、食事時間とマーカー濃度との間に明らかな関連はみられなかった。α-アミラーゼ濃度については、通常の食事時間よりも課題食の食事時間が短くなるにつれ、α-アミラーゼ濃度も上昇する傾向がみられた。 以上の結果から、食事時間を制限した状態が生体に対して急激なストレスを与える可能性が示唆された。特に、食事時間を大きく制限した場合、不快刺激の指標のひとつとして使用されているアミラーゼの活性が上昇することから、急いで食べさせることは、食事を行う際の大きなストレスとなりうる可能性が考えられた。
|