小学4年生144名を対象とし、左右上顎中の唇面の初期脱灰の検査を行った。学校歯科健診の際に2名の学校歯科医による健診の後に、口腔内写真を撮影しその後、暗室においてQLF (Quantitative Light Fluorescence)を用い歯面の撮影を行った。QLFによる画像は初期脱灰層の面積、体積を計測した。また刺激唾液を採取し唾液中の総レンサ球菌量、ミュータンスレンサ球菌量、乳酸桿菌の量を培養法にて測定した。調査対象者のDMF指数は0.64で、QLFによる測定結果では11名に左右両中切歯に、37名に左右どちらか一方の中切歯に初期脱灰層が認められた。口腔内写真は学校歯科医により再度初期脱灰層の有無を判定してもらい、判定者間の一致率および学校歯科医による写真判定とQLFによる判定の一致率を検討した。判定者間の一致率では、両判定者が初期脱灰ありと判定したものが27名、なしと判定した者が62名で残り55名は判定者間で一致が見られなく、一致率は62%であった。QLF画像との一致では、QLFで初期脱灰層ありと判定した者61名のうち学校歯科医1で25名がなしと判定し、学校歯科医2で4名がなしと判定した。また、QLFで初期脱灰層なしと判定した83名のうち、学校歯科医1で28名、学校歯科医2で58名に初期脱灰層ありと判定していた。それぞれのQLFによる診断との一致率は63.19%、56.94%であった。現在ICDASが初期齲〓の診断も含めて提唱されているが、本研究の結果からも現時点における視診による診断にはかなりの限界があり、より客観的な診断法の確立普及とそれにともなうスクリーニングシステムとしての視診による診断の教育プログラムの確立が急務であることが示唆された。上記の対象者を追跡調査し、初期脱灰層の変化と口腔細菌の量との関連を検討した。その結果、短期間でのQLFの変化には唾液中のう〓原性菌の量は関連が認められなかった。
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