研究概要 |
健やかな老後を実現するために,全身的には虚血性心疾患や脳血管障害の原因となる動脈硬化症の予防が,口腔の健康に関しては歯の喪失の原因となる歯周炎の予防が重要である.近年,歯周炎はメタボリックシンドロームとの関連も指摘されていることから,動脈硬化性疾患と口腔の健康を結びつけるために昨年度より本研究を開始した. 本年度は40歳以上の大阪歯科大学職員健康診断の際に得られた測定値や検査データと,口腔内6ヶ所で測定したCPI (community periodontal index)の最大値(CPI max)によって評価した歯周状態の相関について検討を進めた.その結果,今回の対象集団では女性の歯周状態のほうが良好であり,男女とも加齢に伴って歯周状態が悪化する傾向が見られた. CPI maxが0と1以上の者,すなわち歯周状態が健常な者と何らかの所見がある者全員について比較したところ,年齢のほか,血圧,尿酸,γGTP,LDL-C/HDL-C比が有所見者で高かった.年齢を40代の男女に限定して検討したところ,血圧,尿酸,γGTP,TGで有意差が見られた.男女別に検討すると,男性では年齢以外に歯周状態と有意な相関がみられる因子はなかったが,女性では年齢,総コレステロール,γGTPなどに相関がみられた. CPI maxが2以下と3以上の者,すなわち歯肉ポケットの有無により歯周炎のある者とない者で分けて年代別・性別に検討すると,40代男性ではTG,50代以上の男性では拡張期血圧,50代以上の女性ではGOTとγGTP値が,いずれも歯周状態の悪い群で高値だった. 次年度にはELISAで測定したアディポネクチンとその分画の濃度や,新たに問診事項として加わった喫煙歴も対象に加えて,多変量解析を含めた検討を行って,結果をまとめる予定である.
|