研究概要 |
高齢社会となったわが国では,QOLを維持して健やかな老後を実現することがきわめて重要である.全身のQOLを維持するためには,メタボリックシンドロームへの対策をはじめとして,動脈硬化性疾患の予防対策が進められている.しかし,わが国でも成人の罹患率が非常に高く,多数の歯の喪失をきたして口腔のQOLを大きく低下させる原因となる歯周病に対する予防対策は,必ずしも十分とは言えない.そこで全身の健康状態から歯周病を早期発見する方法を確立することを目的に研究を行った. 大阪歯科大学医の倫理委員会の承諾を得た上で,平成19年度の大阪歯科大学教職員定期健康診断における身体測定値,検査データと歯周状態との関連を検討することについて,40歳以上の男性の受診者に同意を求めた.同意が得られた対象者について,口腔内6ヶ所で測定したCPI(community periodontal index)の最大値(CPI max)によって評価した歯周状態と,健診の際に測定された検査データや身体測定値を入力した.さらにELISAキットを用いて血中の総アディポネクチンと高分子量アディポネクチンを定量した. Max CPIが0から2の比較的歯周状態が良い群(n=89)と,3または4の比較的歯周状態が悪い群(n=62)を比較すると,後者では平均年齢が高く,喫煙者が多かった上に,高分子量アディポネクチンの総アディポネクチンに対する比が低かった.このほか,歯周状態が悪い群ではHDLコレステロール値が低く,CRPが高い傾向もみられた. これまでに喫煙や加齢が歯周状態と関連することは知られていたが,今回の研究で,高分子量アディポネクチンの総アディポネクチンに対する比が低いことと歯周状態が不良であることに,関連があることが証明された.この結果を利用すれば歯周病の早期発見・早期治療につながり,口腔ならびに全身のQOLの向上に役立てることができると期待される.
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