研究概要 |
○喫煙習慣と歯科医療費に関する職域コホート研究 喫煙習慣と口腔内状況との関連については多くの研究が蓄積されているが,歯科医療費との関連についての研究はほとんど見当たらない。今回,喫煙以外の歯科保健行動および糖尿病の既往を考慮して,喫煙習慣がその後の歯科医療費に与える影響について検討した。 【対象および方法】某自治体職員(20-59歳)男性5,712名を解析対象とした。対象者を,2000年歯科検診時の自記式質問票の情報から,非喫煙者,過去喫煙者,現在喫煙者の3群に分け,追跡期間中の利用率(%),多重ロジスティック回帰分析により利用率のオッズ比,および分散分析により調整済み一人あたり平均年間歯科医療費を算出した。 【結果】喫煙率は50.5%であった。5年間の歯科医院の利用率は喫煙歴がある群で高い傾向が認められたが統計学的に有意な差ではなかった。歯科受診回数(日数)は,現在喫煙者は非喫煙者と比較して多かった(p=0.004)。現在喫煙者は非喫煙者(p<0.0001)および過去喫煙者(p=0.048)と比較して高い歯科医療費を示した。【考察】喫煙習慣は,歯科保健行動および糖尿病の既往を調整しても,歯科医療費の増加に影響を及ぼしていた。喫煙状況により利用率は大きな違いがなかったことから,歯科医療費の増加は疾患の重症度により引き起こされていることが示唆された。 ○介入研究(歯科保健指導)デザイン 金属製品製造業を主業とする事業所を対象に(1)全職員約600名を対象とした平成20年と21年の自記式質問紙および一般健康診断データを用いた繰り返し断面調査による経時的研究,(2)約70名を対象とした介入研究を行う。介入効果の評価は,歯科健診は(2)の70名のみ行うので歯科指標については前後比較,質問紙および一般健康診断データについては(1)のデータを用いて非介入群を設定し介入群と非介入群を比較する。
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