研究概要 |
平成15年宮城県北部地震および平成17年福岡西方沖地震の被災地域を対象に、平成19年9〜12月に無記名・自記式質問紙調査を行った。およそ5,300世帯に配票し、290名から回答を得た(設問毎に回答数は異なった)。回答者の被災時年齢分布は10歳代(3名)、20歳代(5名)、30歳代(21名)、40歳代(52名)、50歳代(77名)、60歳代(79名)、70歳代(25名)、80歳代(3名)であった。 歯科保健に関連する歯磨き道具の非常持ちだし品備蓄者の割合は、被災前に17.6%であったものが調査回答時には30.7%に増加していた。被災生活ですぐに歯ブラシを入手できた者は231名、入手が1週間以上後になった者が9名であったが、被災後1週間程度において、歯ブラシの代わりに歯みがきガム、うがい薬の配給があれば使用すると答えた者が各212名、220名あった。被災生活の中で歯ブラシ・歯磨き剤の他に必要であった物品として、義歯洗浄剤(53名)、マウス・リンス剤(32名)、歯間ブラシ(32名)などが挙げられた。これらより、被災生活においても清潔維持行動である歯みがきへの欲求は高く、一方実際の被災生活には、物品や歯磨き環境に不足があったと推察された。 被災後2か月の期間に、歯・口の病気で困った家族がいた者は24名(7.9%)であり、その内19名は歯科を受診できなかったことを挙げていた。一方、歯科を受診した者は33名(11.4%)であった。治療を受けた場所はかかりつけ歯科医院が22名、診療している歯科医院が8名であり、仮設歯科診療所を受診した者は1名であった。阪神淡路大震災被災者に比べて、本調査対象は近隣のコミュニティ機能が比較的保持された地域で生活していたと推察され、このような環境下での被災生活では、身近に地域の歯科医療者による受診場所が得られることが歯科受診を促す要件となることが推測された。
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