平成20年度は前年に引き続き、顔面にある経絡への刺激が、身体各部に及ぼす影響について検証を行った。いくつかの顔面経絡および経穴(足太陽膀胱経:清明、攅竹、眉衝、曲差、五処、手太陽小腸経:顴膠、足陽明胃経:承泣、四白、巨膠、地倉、大迎、頬車、下関、頭維、手陽明大腸経:禾膠、迎香)の位置にある表情筋が刺激されるように、両手指でストレッチしたりマッサージすることにより刺激を与え、さらに心理的にもおもしろいという感情が生じる言葉を付与して、笑いを誘う体操を考案した。基礎的なデータを収集するために、この体操を健康な青年被験者で実施し、顔面および体表面の温度変化、心拍数の変化、身体各部位の筋電図等の生理的データを測定した。笑いに関与する表情筋(眼輪筋、大頬骨筋、口輪筋)を中心に顔面全体の筋肉を刺激する従来の方法では1週間の実施群で、心拍R-R間隔の延長やPOMSなどにより心理状態の改善が認められたが、経絡の刺激を加える方法では、期待したさらなる効果を見出すことができなかった。そのため臨床における検証にはいたらなかったが、表情筋刺激がリラックス効果を生むことがより明確になったので、今後刺激ポイントの検証を継続し、ケア技術として手技を確立する。
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