研究概要 |
国際看護協力を行う際の悶題点の一つとして,派遣された国における看護に関する考え方や看護技術のβ本との違いが挙げられる。青年海外協力隊看護職隊員により,被派透国での日本と異なる看護技術・ケアの存在,およびそれに起因する活動上の困難が報告されている。本研究では,我が国の開発途上国に対する効果的な看護協力のために,日本と異なる国の看護技術・ケアに着目し,その差異を明らかにするとともに根拠を分析し,日本の看護技術の国際的通用性を検証することを研究目的としている。初年度の平成19年度はアジア地域に派遣された青年海外協力隊看護職隊員9力国73名の活動報告書を分析するとともに,入手できた中南米と日本の看護技術書計17冊を比較して分析した。報告書から抽出された記述は計605項目,1人当たり0〜37項目であり,605項目中ウズベキスタン,ネパール,ラオスの項目が3分の2を占めた。これらは看護全般44.1%,看護技術35.4%,その他20.5%に分類された。看護技術書の分析では差異のある技術として清拭,血圧測定,筋肉内注射等が抽出された。中南米の文献では清拭に使う温湯が日本より低めであり,血圧測定時の加圧時の送気,筋肉内注射時の皮膚の押さえ方等に差異が認められた。中南米の文献の中にはかつて日本で行われていたが実証的研究により記述が改められた技術が掲載されていた。以上の研究結果より,日本と開発途上国には看護技術上の差異が存在すると示唆され,今後各国で実際に行われている方法と技術書上の記述とを比較すること,技術の成立の背景について明らかにすることなどが必要と考えられる。
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