研究概要 |
国際看護協力を行う際の問題点の一つとして,派遣された国における看護に関する考え方や看護技術の日本との違いが挙げられる。青年海外協力隊看護職隊員により,被派遣国での日本と異なる看護技術・ケアの存在,およびそれに起因する活動上の困難が報告されている。本研究では,我が国の開発途上国に対する効果的な看護協力のために,日本と異なる国の看護技術・ケアに着目し,その差異を明らかにするとともに根拠を分析し,日本の看護技術の国際的通用性を検証することを研究目的としている。2年目の平成20年度はアジア地域,中南米地域に派遣された青年海外協力隊看護職隊員の活動報告書分析と面接調査を継続して実施するとともに,ラオス,ベトナム,中国で活動した隊員の活動法報告書および9名との面接調査結果を合わせて分析を行った。中国については,報告書では「臨地実習において学生が行う基本的な看護技術」80項目中41項目で差異が認められた。面接した中国派遣隊員4名全員が「創傷管理技術」「与薬の技術」「身の回りの援助は家族が行う」「看護記録」について,3名が「膀胱内留置カテーテル法」「点滴静脈内注射・中心静脈栄養管理」「手洗い」などに差異を認めていた。収集した全報告書および面接調査の結果から,バイタルサインの測定値の読み方や記録の違いについても浮上した。これらの結果を踏まえて,ラオスおよびタイで現地調査を実施し,実際の看護技術適用場面の観察,現地看護師の面接,日本人看護師との面接,現地の看護基礎教育で用いられる看護技術書等の資料収集を行った。今後,看護技術の差異が生じる背景の詳細な分析により,日本の看護師が開発途上国で看護活動を行う上での留意点が明らかになると考えられる。
|