研究課題
平成17・18年度にかけて開発した看護倫理教育プログラム暫定版にもとついて実施した授業を受講した卒業生のうち3名から、卒業後1年目の臨床現場で体験する倫理的ジレンマと、倫理的感受性に関する縦断調査についての研究協力を得た。協力が得られた卒業生に対する面接時間は60分〜70分間であった。3名が所属する医療施設はすべて異なるが、いずれも200床以上の大規模病院に所属していた。臨床現場で体験する倫理的ジレンマに関する語りを抽出するとともに、現時点での倫理的感受性について考察し、以下の特徴を明らかにした。・ 卒業後1年目といえども倫理的価値を反映して行動し、倫理的ジレンマを感じつつも、日々の実践のなかで看護を実現しようとしていた。・ 倫理的ジレンマの焦点とそれが動いていくありようが、倫理的感受性の発達段階を示し、発達途上にあることを示唆すると考えられた。・ 卒業後1年目で経験する倫理的ジレンマは、身近にいる医師や上司となった看護師の行動や判断から、受講生自身がとらえたそれらの人々の倫理的感受性に影響されていた。以上より、本プログラム受講生は周囲の医療者の倫理的感受性に影響を受けており、1年目でありながら、受講生自身の倫理的価値を反映して看護を実現しようとしていることが明らかとなり、それがジレンマを助長することも懸念された。本プログラムの教育効果をより慎重に検討する必要性が明らかとなった。またこのことは、看護学教育のコアカリキュラムとして看護倫理教育のあり方そのものを、医療組織文化との関連で検討すベきことを示唆するものである。
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