研究概要 |
1.正方形の創をマウスの背部に,各辺を前後左右軸に平行に作成すると,角の部分に形成される瘢痕が突出した状態で残存し,瘢痕の形態が4辺突出した星状になることが判明し,これには,角における早期の筋線維芽細胞の消失が関与していると観測され,筋線維芽細胞の消失時期を統一することが,創をきれいに治癒させるには重要と考えられた。 2.1では,角が直角で,マウスの前後左右軸に平行に作成した影響を調べていないので,今年度は,ひし形の創で角の大きさ(45度,135度)を変化させてみるのと,正方形の創で角を90度回転させても同じ結果になるかの検討を行う。3.キトサンオリゴ糖が創傷治癒に効果があるか検討し,倉を作製したマウスの腹腔内に投与を行ったが,生食投与群との間に有意差がなく効果が無さそうで,逆にオリゴ糖の数日間の連続投与は腹膜炎を起こすようなので,慎重に検討しないといけないことが分かった。 4.3の結果を元に,濃度を変化させたキトサンオリゴ糖を,皮膚創傷に直接に塗布してみたが,創治癒に効果はなさそうで,逆に炎症を増加させる可能性が示唆された(論文作成予定)。 5.創傷とは直接に関係ないが,キトサンオリゴ糖によって誘起される腹膜炎に関する研究も行っている。腹膜透析でおこる炎症の機序の開明に役立つと思われる。 6.無タンパク食で飼育したラットの皮膚創傷治癒を検討し,筋線維芽細胞の数と創傷治癒に関係を検討してみているが,たが,まだ,はっきりしたことは言えないが,さらに研究をすすめる予定である。 7.創傷治癒過程にリンパ管がどのように関与しているかを検討した。創に出現する新生リンパ管は,新生血管とは非常に異なり,肉芽形成期の途中から徐々に出現し,ゆっくりと肉芽全体に広がり,その数は,血管よりかなり少ない。創傷治癒にリンパ管はあまり関与していないようであるがさらなる検討が必要である。
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