研究概要 |
1. マウス皮膚創傷治癒過程におけるリンパ管新生と浸出液との関係に関してのまとめとして,学会発表(日本褥創学会)と論文投稿(雑誌:Wound Repair and Regenerationで査読中)を行った.創傷治癒部位(肉芽組織)にはリンパ管は血管よりも2-3日遅れて出現し,肉芽形成期早中期では,浸出液の排泄にはあまり関与していないこと.後期には排泄に関与の可能性が示唆された.また,浸出液は創周囲から創へ流れ創表面より排泄されている可能性を示し,浸出液が創内の異物,壊死物質をリンパ管に取り込ませるよりも,体の外へと流すことで,創傷治癒を促進していることが示唆された. 2. 1の結果を踏まえて,リンパ管新生阻害試薬を用いての実験にとりかかることができ,現在,新生リンパ管が創傷治癒に必要かどうかを検討し始めている. 3. 女性ホルモンの欠如(女性の更年期以降の重要な現象)が創傷治癒を遅延させると言われているがその機序はまだ不明な点があり,卵巣切除マウスで創傷治癒を観察した(プレ実験).必ずしも創傷治癒が遅れるとは言い難い結果を得たので,更なる研究を現在行っている途中である. 4. 角のある皮膚欠損創(正方形,45度の角を持つひし形)を角が前後方向,左右方向に向くようにして作製して,その治癒を観察した.どの方向でも,前回論文(2007年, Mawaki et al.)で発表したのと同じように角の部分がやや突出し,線条の瘢痕を形成したので,創を奇麗にするには,角をそのままに放置しないようなケアの必要性が明らかになった.
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