研究概要 |
健康な大学生を対象とした研究の次の段階として,平成19年度は「健康な高齢者におけるハンドマッサージの自律神経および心理面への影響」を検証した。健康な大学生を対象としたハンドマッサージの生体反応では,自律神経活動(心拍変動及び鼻尖部皮膚表面温度),主観反応(STAI及び感情プロフィール検査),覚醒度とリラックス度(VAS)において生理的・心理的の両側面からリラックスできたことが明らかになり,特に状態不安については著しい効果があった。同様に地域で自立して生活を営んでいる健康な高齢者(平均71.6±7.2歳)においても,生理的・心理的の両側面からリラックスできたことが明らかになった(日本統合医療学会に投稿準備中)。 また降圧剤を内服中の人がリラクセーション訓練を治療に加えると,血圧がさらに下がることが明らかにされており,高血圧などの循環器疾患罹患者にリラクセーション訓練を実施する際には医学的注意が必要である。そこで,地域で自立して生活を営んでいる,高血圧と診断され治療中の高齢者(平均72.2±4.5歳)と,先の研究対象である健康な高齢者において,ハンドマッサージの生体反応を比較検討した。その結果,ハンドマッサージ実施前後で血圧値の有意な差はなく,心拍変動の変化も正常範囲内であった。そして生理・心理的の両側面において高血圧罹患者と健康な高齢者の間に有意な差はなかった(日本生理心理学会に投稿準備中)。 本研究は将来的には患者や在宅における要介護者への看護ケアのひとつとしてハンドマッサージを実践することを目標としている。今回の健康な高齢者および高血圧罹患者における結果より,ハンドマッサージのリラクセーション効果のみならず,安全性も明らかにすることができたと考えている。
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