研究概要 |
【目的】本研究は,癒し技法としてのタッチの効果を科学的に評価することを目的としている。【研究方法】研究の趣旨に同意した20〜30歳代の健康な女性14名に,タッチの施行者と受け手を交互にペアで行ってもらった。実験手順は(1)安静5分,(2)呼吸法5分,(3)タッチの施行5分,(4)タッチの受け手5分とし,持続的に皮膚電気抵抗,手指先温度,心電図を測定した。また(2)〜(4)の後でPOMSを行った。【結果】今回は皮膚電気抵抗のデータを中心に,欠損値のない12名分を分析した。皮膚電気抵抗値(AC成分)は,安静時より呼吸法時がやや高く,また安静時とタッチ施行時の比較では,先にタッチを受けた群はタッチ施行時がやや高く,先にタッチを施行した群はタッチ施行時がやや低かった。POMSは,先にタッチを受けた群でタッチ施行後の活気得点がやや高かった。【考察】皮膚電気抵抗値(AC成分)の上昇は交感神経系の興奮を示すといわれる。よって今回の結果は,先にタッチを受けた群において交感神経系の興奮がやや大きい傾向にあったと考えられる。またタッチにより手指先温度が上昇するという前回の結果と併せて考えると,皮膚電気抵抗値の上昇は,交感神経系の過度の興奮ではなく,適度な興奮を示すといえる。このことは皮膚電気抵抗値の上昇が,リラクセーション反応の生じやすい呼吸法中にみられていることからも裏付けられると考える。他方,タッチを受けた群の被験者が,その直後に施行したタッチにおいて皮膚電気抵抗値の上昇がみられたことは,やはり交感神経系の適度な興奮の状態にあったのではないかと推測できる。この群の被験者においてタッチ施行後の活気得点がやや高いことを考慮すると,効果的なタッチを行っている状態とは,単に副交感神経系優位の状態ではなく,交感神経系の適度な興奮をともなう状態である可能性があり,この点を追求することが今後の課題である。
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