平成19年度に構築した開発教材のコースアウトラインに沿って、システム開発を行った。第一段階として、転倒のリスクが潜む患者2事例(事例1:認知・理解力に問題のない歩行不可能な患者、事例2:認知・理解力に問題のある歩行可能な患者)の学習コースを試作した。 システムの流れについては、以下の4つのデータベースをもとにしている。 1.学習者データベース:教材を利用した人すべての学習経過を蓄積する。初めて学習する場合には、学年あるいは看護師経験年数を選び、 IDを入力し、2回目以降利用する場合は、初めに入力した年数とIDを入力することによって正しく学習管理を行うことができる。 2.事例データベース:患者プロフィール、看護場面のムービー、判断すべきリスクファクター、リスクに応じた対処法、 Q&Aが含まれる。 3.診断結果データベース:過去のすべての学習履歴(学習した事例、患者プロフィールから捉えたリスクファクター、ムービーから捉えたリスクファクター、 Q&Aの結果、入力された自己のリスク感性の評価)を確認できる。それによって、自己の回答の見直しや、再学習を可能とする。 4.コミュニケーション診断データベース:シミュレーションの結果、学習者が自己のコミュニケーション傾向に問題があると自覚した場合、村中ら(2007)が開発したWeb教材「看護者のコミュニケーション・スキルを学習する教材」で事例の追学習ができるようにリンクさせている。 本システムは、現実の問題に準拠した事例によるシミュレーション、危険予知に関する知識の診断テスト、学習管理等の多様な機能を有していることが1つの特徴である。これを使って、医療事故に関する自己の知識とそれに基づく観察力や注意力、コミュニケーション傾向を自己診断でき、さらに安全管理に必要な判断力を時間や場所に制限されることなく、必要に応じて訓練することができると考える。
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