研究概要 |
本研究は,精神科看護師の倫理的悩み(moral distress:倫理的価値や原則に基づいて正しい意思決定をしたが,組織の方針などの現実的な制約により実行できなくなったときの悩み)を日英両国で比較するとともに,倫理的悩みとバーンアウトとの関係をも明らかにしようとするものである。平成19年度に行ったことは,質問紙の作成と日本での調査である。 尺度開発については,まず,クリティカルケア領域で用いられているmoral distress尺度(MDS)をもとに,国内外の多くの研究結果の検討を行って,精神科版MDS尺度に入れる項目を決定した。これには原文が英語のものと日本語のものとが混在していたため,それぞれを両国語に翻訳し,バックトランスレーションやバイリンガルによる検討を行って,英語版と日本語版とで意味内容の等しい尺度項目を作成した。これに,バーンアウト尺度(MBI,日英両国語版があり,すでに信頼性、妥当性は確認されている),調査すべき属性を加えて,質問紙を作成した。さらに,これをパイロットスタディとして,3名の精神科での臨床経験をもつ看護師に実施し,質問項目をさらに精選し,質問紙を完成した。 これを,三重県,青森県,千葉県の合計6病院の看護師,計391名を対象として,調査を行った。283名から回答があり,回収率は72.4%であった。当初,計画していた2回の調査を行うためには,記名による回答が必要となることから,信頼性の検討にはCronbach α係数を用いることとし 無記名による1回の調査とした。 次年度は,このデータのうち,仮精神科版MDS項目の因子分析等の解析を行い,妥当性,信頼性等を確保した精神科版MDS尺度を開発する予定である。また,精神版MDS尺度となった項目だけをデータとして残し,バーンアウトとの相関を検討する予定である。
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