本研究は、精神科看護師の倫理的悩み(倫理的に正しいと思ったことが現実的な制約で行えないときに生じる悩み)を測定する尺度(MDS-P)を開発し、日英両国で比較するとともに、バーンアウトとの関連を調べるものである。 今年度は、昨年日本の精神科看護師を対象として仮尺度を用いて実施した質問紙調査の解析を行い、3因子32項目から成るMDS-Pを開発し、信頼性・妥当性があることを検証した。また、この結果、倫理的悩みの得点が最も高かった項目は、「安全が保てないと思うような少ない数の看護師で仕事をする」という職員配置の問題であった。これらの結果を、日本看護研究学会及び日本看護科学学会、イギリスのNetwork for Psychiatric Nursing Research学会で発表した。 さらに、イギリスでの調査を行うために、National Research Ethics ServiceのHarrow倫理審査委員会に申請を行い、半年以上かかったものの、承認を得ることができた。そこで、10月にイギリスに渡航し、East London NHS Foundation Trustに属する3つの精神科病院に勤務する看護師を対象に昨年作成した英語版の仮尺度による質問紙調査を実施した。併せて、対象となる3病院及びTrust本部を訪問し、病院内の見学及び看護部長、精神科医などとの面接を行った。このイーストロンドンの精神科病院の実際は、帰国後に論文としてまとめ、発表した。 現在、日本における調査結果を論文にまとめているところであるが、来年度はイギリスでの調査結果との比較、バーンアウトとの相関を検討し、論文としてまとめたい。
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