本研究は、急性期病院の病棟における看護場面に注目し、様々な経験レベルにある看護師たちがその実践をどのように成り立たせているのかを記述し、これをもとにして看護における実践知を検討することを目的としている。 本年度は、研究開始に当たっての準備と予備調査を行った。 具体的には、所属部局の研究倫理委員会にて計画書の審査を受け、承認を得た。さらに、調査のためのフィールドを開拓するとともに、約1週間の参与観察と複数回の個別インタビューを行った。 参与観察は、病棟の流れを把握するために、日勤を中心に連日実施した。中勤と夜勤は、申し送りの時間帯を中心に参加観察をした。その方法は、各勤務帯ごとに調査者の各々が1人の看護師と行動をともにして、行われていることや発言などを記録するというものである。必要に応じて、実践に参加をすることもあった。勤務交代時に行われる申し送りと病棟カンファレンスについては、了解を得て、映像と音声をビデオカメラとICレコーダーで記録した。記録は逐語におこして、トランスクリプトを作成した。 非公式のインタビューは、各勤務時間帯に同伴させてもらった看護師や病棟での動きを調整をしてくれた看護師に、そのつど気になったことや分からないことなどを質問するという方法で行った。病棟管理者(病棟師長、係長)には、約2時間の個別インタビューを実施し、病棟の状況、および他病棟や他部門との関連をどのように把握していたり、そのために何を見ていたり何を気にかけているのかを、具体的な状況とともに話してもらった。語られたことはICレコーダーに録音し、逐語におこしてトランスクリプトを作成した。 今後は、参与観察の方法をさらに吟味・開発するとともに、トランスクリプトの分析方法を検討していく予定である。それをもとに、来年度は本調査を実施する。
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