本研究の目的は、入浴のタイミング(睡眠30分前の10分問の入浴、睡眠1時間前の10分間の入浴、睡眠2時間前の10分間の入浴)が睡眠に及ぼす影響は明らかにすることである。 被験者は健康成人12名とし、夏季に室温27℃の環境下で、睡眠30分前の10分間の入浴、睡眠1時間前の10分間の入浴、睡眠2時間前の10分間の入浴の3条件を、実験日を変えて同一被験者に実施させた。測定は、多用途テレメータ(日本光電)を用い、脳波(C3、C4)オトガイ筋の筋電図、眼電図、心電図(II誘導)を導出し、安静時から、自然に覚醒するまで測定した。また、鼓膜温を入浴直前、入浴直後、就寝直前、就寝直後に測定した。主観的感覚としては、OSA睡眠調査票を用い評価した。 12名の解析結果は、睡眠段階のStage3、Stage4、SWSの出現時間は、3条件間で有意差(P=0.046、P=0.008、P=0.001)が認められ、就寝前2時間の入浴で最も多かった。同様に、就寝前2時間の入浴で中途覚醒の出現時間が少なかった(P=0.015)。主観的睡眠感では、眠気、睡眠維持、気がかり、統合的睡眠感に3条件間で有意差(P=0.002、P<0.001、P=0.002、P<0.001)が認められ、就寝前2時間の入浴で良好な睡眠傾向であった。外耳道温は、いずれも3条件間で有意差はなかったが、就寝前2時間の入浴では入眠直前の外耳道が最も高かった。また、外耳道温の経過時間による差(P<0.001、P<0.001、P<0.001)が認められた。これらの結果から、就寝前の入浴のタイミングは、就寝前30分、就寝前1時間の入浴に比べて、就寝前2時間の入浴が睡眠の質を高める上で効果的であると考えられた。
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