本研究の目的は、対象者やその家族にとって安全で信用できる保健医療を提供する看護専門職の育成のために、看護基礎教育の段階から自分の実践を適切に自己評価する能力の育成を目指した看護技術の評価システムを開発・評価することである。本年度の研究目的は、看護技術の修得に対する自信の自己評価と他者評価との合致度を数量化した確信度のフィードバックが次に生かされるという自己評価サイクルの検証である。開発した看護技術の評価システムは、看護技術の評価として、認知領域と精神運動領域の確信度評価、評価結果のフィードバックを1クールとして2回繰り返すものである。フィードバックでは、学生は2領域の正答率と確信度評価得点を1つの座標に示した個別資料を提供され、振り返る機会が与えられた。2クール後のフードバックでは、2度の評価結果の推移を1つの座標に示した資料が提供された。 確信度のフィードバックが次の看護技術の確信度の向上に生かされることを検証するため、フィードバック前後の確信度の変化を分析した。結果は、フィードバックの確信度の増加がみられ、自己評価の正確さに関するフィードバックがその後の看護技術修得を促進することを示唆していた。特に、精神運動領域では統計学的に有意な増加がみられた。2領域間の確信度の有意な関連性はみられなかったが、1クール目の認知領域の確信度は2クール目の精神運動領域の確信度と有意な相関関係がみられた。看護技術に対する確信度は、認知領域と精神運動領域が相関関係を保ちながら高まるのではなく、認知領域の自信の正確さがその後の精神運動領域の修得に影響することが考えられた。1クール目の認知領域の確信度は、学生の日頃の学習スタイルや思考過程を反映すると考えられるが、十分な分析には至っていないため、1クール目が開始される前に学生が記載した評価課題に対する行動計画書の記載内容の分析を進める必要がある。
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