研究概要 |
1. キネステティクスを用いた介助法の臨床への導入方法及びその効果 医療施設や福祉施設で提供している介助法にキネステティクスを取り入れようと定期的に研修会を開催している2つのグループ(看護師や保健師、介護士、ホームヘルパーなど多職種がメンバーとなっている広島県三原市のキネステティクス研究会、静岡県立短期大学社会福祉学科の教員が中心となり研修会を開催し福祉施設から組織的に研修に参加している介護職がメンバーであるグループ)で、中心的に研修会を企画している方々と座談会を持ち、現状と今後の課題について討議した。看護・介護に関わる個人が定期的にキネステティクスを学び、それを臨床に導入するには限界があるため、臨床の看護・介護の責任者にキネステティクスの導入について理解協力を得られるかが鍵となると考えられていた。ある福祉施設では、高齢者の体位を整える方法を介助者全体で組織的に取り組むことにより、高齢者の表情が明るくなり、関節の拘縮が改善したとの実例報告もあった。 2. キネステティクスを用いた介助を行うことによる介助者の身体的負担 上方移動介助時における介助者の身体的負担について、キネステティクスを用いた介助法と従来の介助法の両方を11名の対象者に実施させ比較検討した。その結果、従来の介助方法に比べキネステの介助方法は被介助者の動きに合わせて介助を行うため時間を必要とするが、上腕二頭筋、僧帽筋、脊柱起立筋、ハムストリングなどにおける1秒間の筋活動量や最大筋活動量の比率,身体角度,床反力から身体的負荷が少ないと考えられた。また,主観的評価からもキネステ法は従来法に比べ介助者にとって負担感が少ないことが示唆された。そのため、介助者の身体的負荷を軽減させ腰痛発症を減少させることのできる有効な介助動作であると考えられた。
|