本年度は、3年間の研究成果として研究実績を研究報告書にまとめた。 その内容は、模擬患者の特性に関する研究I、「SP(訓練された模擬患者)の対話学習における応答技法の特徴」について、行動解析ソフトを用いて模擬患者に期待される能力として明らかにした。ベテランSPは、相手がベテラン看護師であっても、学生であっても患者らしさを失わない訓練を受けていることが必要であるとがわかった。次に模擬患者の特性に関する研究II、「SP(訓練された模擬患者)の看護学OSCEにおける応答技法の特徴」をまとめ、OSCEではフィードバック能力が重要であることを確認した。これらは昨年までのデータで、本年度は解析と結果の関連についても検討した。また、これを元に二つのプログラムを提案した。二つのプログラムは昨年度に実施したもので、本年度はこれらを分析し、介入の成果を明らかにした。一つは、「市民模擬患者養成における看護学生との対話研修の意義」であり、実習前に学生と対話訓練をすることで、学生の内面を理解し、学生に適応的なフィードバックができるような養成課題を抽出し、学生を理解する模擬患者養成プログラムとした。次に、「養成過程にある模擬患者の不安と役割支援プログラムの検討」をおこない、一定の実技見学や訓練を終えた後に、不安を軽滅する模擬患者養成プログラムとして、役割を学習するプログラムを提案した。これらの結果に加えて、本年度は、研究の基盤となったこれまでの知見と今回の研究の成果の公表として、1年間の雑誌連載を行った。連載は、軽度認知症シナリオの取り組みを行った全国セミナーの誌上公表も含め、模擬患者シナリオの可能性も示唆した。本年度の結果から、今後に残した課題も明らかにすることができた。今後は、国内的な養成の実態や模擬患者自身の内的過程との関連などを考慮し、長期にわたる負担軽滅の方法などを開発する必要があると考えられた。
|